新・手品師の裏側〜2002/5/7

No2:捨てる奇術               2002/4/22
引っ越した後の整理整頓は、その時が勝負といいます。

「とりあえず、その家具はそこに。テレビはとりあえずあのコーナーに。パソコンはとりあえず窓のそばでいいや」なんて仮に置いたが最後、ずうーとそのままです。

(じゃあ、とりあえず、ツッコミ入れるの後でいいか、プハァー<タバコ吸った音>:管理者)

中途半端だけどジャマにならなければ、家庭が崩壊するまできっとそのままでしょう。これを引っ越し専門業者のあいだでは「とりあえず症候群」と呼び、クライアントに注意を呼びかけているくらいです。

私も引っ越した時の段ボールが「とりあえず」おいた所に10年あります。まるでタイムカプセルです。

家庭によっては、引っ越しの最中に、いなくなったダンナが数年たってから押入の奥でミイラになってでてきたという家も、よくあるようです。
(ねーよ:管理者)

マジックの大道具には美女を「収納する秘密の部分」があります。
(それってやっぱりやくすと「秘部」っていうの?:管理者)
(ゆわねーよ!ってこっちがツッコミ入れてどうすんだ!:筆者)

からっぽに見える箱の土台が、実はそういう部分だったりするのです。
一見、薄っぺらに見えて、かなりのモノが入る。
まるで私のようです(?)

そんな素ン晴らしいノウハウを知っていながら、なぜ我が家の収納は丸見えでうまくいかないのでしょう。
家での収納の問題は確かに永遠の課題です。だから「捨てる技術」という極端な指導書もでてくるのです。

将来には、モノにこだわるという『物欲』という精神論で解決しようという、もはや宗教に近い指導書があらわれるかもしれません。

たとえば、
「これでスッキリ!、物欲からの解脱・家庭収納術」
「家には何もいらない!大事なものは心に収納。いらないモノの成仏術」
「あなたは無意味にモノを捨ててないか! モノの尊厳死の仕方!」
などなど。

最近、知り合いの木工所に収納棚を頼みました。
棚で思いだし笑いしてしまうのは、落語のまくら(つかみ)です。

「おまえのつった棚、落ちたゾ!」
「おかしいなあ、そんなわきゃねえんだが…。何か置いたろう!」

これほどまでではないですが、その知り合いの会社に注文にいくと、彼の失敗談をいろいろ聞かされました。

収納家具の寸法をとってきて作ったものの、廊下のカーブを考えずに作ったものだから、部屋に入らなかったとか、そもそも部屋に行く前にマンションのエレベーターに入らなかったということもあったそうです。
また、天井のハリを忘れて「開き扉の収納箱」を作って、据え付けたら、扉がハリに当たって使いモノにならなかったとか…。
人ごとだから笑えます。

もっともマジックの大道具作りでも、昔はよく失敗したものです。
同じ空間に棒が2つ存在したりとか、秘密のドアを作り忘れたりとかの設計ミスはよくありました。

魔法の箱のサイズを「小さく」つくっちゃうということはあまりありません。
むしろ安全に「大きく」作ってしまう傾向があります。

それは箱の場合、1辺は小さくても立方になると大きくなってしまうからです。

やせたアシスタントの美女ひとりと入れ替わるだけなのに、まるで象でも入っているかのような箱をよく、学生マジック大会とかアマチュア大会で見かけます。

今は、段ボールでシュミレーションして製作するから、その心配はありませんが。

ともかく私の棚がもうすぐできあがってきます。

彼の設計したものが、果たして無事に我が家のその収まるべき空間にそれ自体が「収納」できるか、ちょっと心配でもあるし、ちょっとスリリングでもあります。

(いいねえ、見モノだね。収納する時、家によんでよ:管理者)
(あのね、ビル爆破なんかのアトラクションじゃないんだからね…:筆者)

その報告はまた別の時に…。

写真は、前を走っていためずらしい車。
うーん、どんな犬だろう。セント・バーナードだろうか?




No5:うまいカニの話               2002/5/7
本屋さんに寄ったら

「50歳からのパソコン」

というのがありました。
ぱらぱらと立ち読みして驚いた。
「ダブルクリックがうまくいかない人」
なんて項目がある。

なんで?と思うのだが、世の中にはいろいろな人がいることを、いつも認識していなくてはいけません。
自分の出来ることが他人に出来るとは限らない。

私に関してみると「50歳からのゴルフ」だってあり得るし「50歳からの料理」や「50歳からのキャバクラ遊び」というのもあり得るわけです。

経験がないから…。

(ギャバクラ遊びはマニュアルみなくても野性のカンでわかるでしょ!アナタは:管理者)

でも、中年から何かやりだしたら、加速度的にのめり込み、むしろ身を持ち崩すということもあります。

熱帯魚に何百万とつぎ込んだり、カメラに凝ったり、夜の女性にどっぷりはまったり、陶器にぞっこん惚れ込み、山を買って窯まで作った人もいます。

結局、若いうちにいろいろ経験しておくことが、歳をとっても冷静な判断ができ、金もかからないというものです。

知り合いのS君が、先日、数分で1万円の授業料を払いました。
何を経験し学んだか、そしてそれが高いか安いかは本人の問題ですが…。

その若いS君が、昼間、車を走らせていると、新宿あたりの信号で横に並んだ軽トラックの運転手が、S君の助手席の窓を叩いたのです。S君はパワーウインドウで窓を開けました。

すると、中年のオッサンが
「あ、ごめん。息子の車だと思ったよ。それ新しい奴だよね。同じ色なんだよ」というのです。
確かに出たばかりの新車で、見間違えたとおもったそうです。
すぐさまオッサンは
「悪かったね、あ、そうだ、俺、魚屋だからあまったのあげるよ。何かの縁だ」
そうこうしていると、当然信号は青になります。
オッサンは続けて言います。
「ちょっと、車寄せてよ、わけてあげるから」と軽トラックを路肩に停めたのです。
S君も後ろにつけました。

オッサンは荷台の品物を見せました。そこには大きな伊勢エビや大きなカニが山ほどあったのです。そして発泡スチロール箱からカニをだし、食べさせました。
「うまいだろ?」

S君は止せばいいのに食べました。確かにオッサンは「あげるよ」と言ったのですから。

すると突然こういったのです。「伊勢エビもカニも、ここにある魚、全部で8万円でどうだい?」と持ちかけたのです。

驚いたS君はカニを喉につまらせながら「そ、そんなお金ないですよ」というと「いくらなら出せる?」との問いに「い、一万なら…」とつい本音。

で、お札を出すと、オッサンはそれをすぐに取り「じゃあこの箱にカニが二杯あるから、他で買うより安いよ」といって大きなスチロール箱を手渡し、さっさと車を走らせていったというのです。

S君が箱を開けると、カニの足が数本あるだけだったというわけです。

つまりそんなうまい話は世の中にないということです。
絶対にうまい話は世の中に存在しないと思うべきでしょう。

しかし話の運びが実にうまい。マジシャンなら優秀です。
そしてマジックなら実によくできた手順です。
分析するとこうなります。

1)導入としては『息子と間違えた』は、話かけるきっかけです。そして暗にこの言葉で「ああ、オッサンは結婚しているんだ。息子おもいのいい人なんだ」と思わせます。
「愛人と間違えた」では話は続きません。
この近づき方は街角でも電車でもできます。ナンパするなら「ごめん、妹かと思った」とか「松嶋菜々子さんですか? あ、間違えました」なんていいでしょ?
でもあきらかにブスな人にはむしろ疑われます。

(よく私も、「オードリーヘプバーンみたいですね。」といわれるけどそれもナンパかな? それとも本当にそう思ったからなのかな?:管理者)
(り、両方でしょう:筆者))

2)術中に引き入れる誘導のキーワードは、『何かの縁』です。『他ならぬ息子と間違えたんだ、残り物あげるよ』はよく考えれば強引ですが、そこまで考えさせないのが、道路上でなおかつ信号が変わるというタイミングなのです。

3)次に、まずショックを与える。この場合は豪勢な伊勢エビと大きなカニ。

4)そして、逃げられない囲い込みとして『おいしいだろう?』とただで食べさせ、負い目を与える。

5)そしてガツンと第二のショックを与える。
『全部で8万でいいよ』8万!
その金額で一撃を与えれば、あとは、持ってる金を出さざるを得なくなります。

6)そしてお金を先に奪う。あとから品物。
『普通で買うより安いよ』と文句をいわせないトドメ。

うーんよくできてるルーティンだ。

これは、詐欺だけでなく、人を陥れようとする手順の見本になるでしょう。
もちろん悪いことだけでは、ありません。
人を誘導するのにも最適だということです。
気のある人に自分を好きにさせること、とか上司の気を引くとか、仕事先で受注させるようにするとか。

この「魚屋のオッサン商売」はいろいろなことに応用できることになります。結局、S君は将来、中年になって「人を操縦する方法」なんて本を買わなくてすむのですから、1万円で若いうちに実戦で経験してよかったということになります。

でも、もうカニは食べたくないだろうね。
うーん、ちょっと実際に経験してみたい。

(本当にうまい話はないわね。でも一万円でよかったじゃない。
で、その間抜けなS君って、私も知ってるXXX君?:管理者)
(正解です! 賞品に伊勢エビを送りますので、送料20000円振り込んでください:筆者)
(いらねーよ!:管理者)

写真は、近所の雑貨屋の店番。
「おばさん! タバコケース頂戴!」と声をかけたくなる…。